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道路整備計画 特定財源維持ありきの国交省案(11月15日付・読売社説)

 「道路予算は一円たりとも譲らない」――道路族議員国土交通省の決意表明と受け止める人も多いことだろう。

 国交省が、今後10年間を見通した道路整備計画の素案をまとめた。国民生活の改善に欠かせない道路の整備を進めるため、合計68兆円の財源が必要だ、と強調している。

 このうち、国が負担する分は、35・5兆円だ。残りは、地方自治体が24兆円程度、さらに民営化された高速道路会社などが負担する。

 使い道を道路整備に限定する道路特定財源は年間、揮発油税などを中心とする国分が3・4兆円、地方分が2・2兆円ある。国交省の素案は何のことはない、それぞれの10年分の道路特定財源の税収に、ほぼ見合う金額だ。一般財源に回すお金はない、と宣言したに等しい。

 国交省は、住民から要望の強い高速道路建設や交通渋滞の解消、通学路の安全確保などの事業を積み上げた結果だ、と説明する。だが、最初から財源確保を狙い、数字を合わせたようにみえる。

 道路特定財源の改革では、昨年末、必要な道路を造ってなお余る分は、一般財源化することが閣議決定された。それを受け、国交省が「必要な道路」について整備計画の策定を進めてきた。

 政府は、この素案をたたき台に、年内に計画を最終決定するが、このままでは道路族や国交省の狙い通りになる。

 道路特定財源は、今年度でさえ1800億円が一般財源化されている。昨年度までは、旧本州四国連絡橋公団の借金返済に、年5000億円程度を支出していた。それを考えれば、来年度以降も相当な額を一般財源化できるはずだ。

 国の危機的な財政事情からみて、これまで通り道路に資金をつぎ込む余裕はない。政府・与党は今回の素案を修正し、大胆な一般財源化に踏み出すべきだ。

 その際、肝心なのは、税率を本則の2倍程度に引き上げている暫定税率を、このまま維持することだ。

 暫定税率は来年3月から4月にかけて期限切れとなる。すべて廃止となれば、2兆円を超す税収減につながり、一般財源化も危うくなる。

 民主党は、暫定税率を打ち切った上、有力な道路特定財源である自動車重量税や取得税の廃止などを打ち出している。これでは国の財政再建に逆行するし、ガソリンの価格下落で車の走行量が増え、二酸化炭素の排出量も増える。

 地方自治体は貴重な財源を失い、都市部との財政格差がさらに広がる。格差是正を唱える民主党の主張とも矛盾するのではないか。