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社説1 歳出改革を無視した道路財源の温存案(11/15)

 ある程度予想されたとはいえ、小泉政権以来の改革方針をかくも無視した役所の案も珍しいだろう。国土交通省が13日に自民党道路特定財源プロジェクトチームに示した、2008年度から10年間にわたる道路の中期計画素案のことである。

 彼らが判断した「真に必要な道路」の事業費は、高速道路の料金引き下げなどを含め、10年間で合計68兆円以上。過去5年間の道路投資額は年平均で6兆 9000億円で、10年分なら「68兆円以上」にぴたりと合う。国交省揮発油税自動車重量税など道路財源の暫定税率(上乗せ税率)の10年延長も08 年度税制改正で追加要望した。

 国の道路歳出は35兆5000億円で、道路財源の税収見込み額である31兆―34兆円を上回る。安倍晋三前首相が昨年12月に「一般財源にする」と言った余剰額は1銭も生じない。安倍内閣から在任の冬柴鉄三国土交通相は「(税収が余る)すき間はない」と明言した。

 06年に閣議決定した「骨太の方針」に沿い、公共投資は来年度3%、その後も11年度まで毎年1―3%削減する。現状維持の中期計画案はこの決定への配慮を全く欠く。

 わたしたちは道路特定財源をできるだけ幅広く、環境対策など何にでも使える一般財源に変えるよう求めてきた。苦しい財政を考えれば揮発油税などの暫定税率を維持するのはやむを得ないとしても、一般財源化の余地を一切認めず、税収を道路関連の特権として事実上、温存させることは断じて容認できない。

 改革路線は福田康夫首相のもとで逆走し始めたとの疑念を強めざるを得ない。道路財源は01年に小泉純一郎元首相が「見直しの方向で検討したい」と表明、安倍前首相も昨年秋の就任直後に一般財源化に強い意欲を示していた。国交省素案は道路族による改革の骨抜きを象徴するものになる。

 確かに地方経済の疲弊にどう対処するかは難しい課題だ。だが社会保障費などがさらに膨らむ中で、旧来の「金額ありき」で道路を造り続けることを本当に民意が求めているのか。地方自治体には既存道路の維持や補修が重荷となり、新規事業への抵抗感を訴えるところもある。

 国交省素案は地域の自立、安全・安心など首相が好む言葉を並べ、道路事業の採択に数値基準を設けた。工夫の跡はあっても、帳尻合わせに変わりはない。政府・与党が年末にまとめる道路中期計画が素案の追認に終わるなら、福田政権の改革姿勢への失望感は決定的になろう。

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